未伝道部族とは何か
(マタイ28:18-20)イエスは、近寄って来て言われた。「わたしは天と地の一切の権能を授かっている。だから、あなたがたは行って、すべての民をわたしの弟子にしなさい。彼らに父と子と聖霊の名によって洗礼を授け、あなたがたに命じておいたことをすべて守るように教えなさい。わたしは世の終わりまで、いつもあなたがたと共にいる。」(新共同訳)
1,聖書が言う「民」(ギリシャ語でエスネー、英語ではNations)とは、今日のような政治的国家のことではなく「部族集団」(People Group)、つまり、民族・部族・言語・文化のグループを意味します。「すべての民を弟子にしなさい」という大宣教命令は、この部族集団の全てに宣教する、という意味です。1つの国家の中にも様々な違う部族集団が存在します。例えば、ミャンマーという1つの国家の中に、135個以上もの部族が存在します。なので、たとえその国で多くの未信者に伝道してクリスチャン人口が増えても、全部族を宣教したことにはなりません。
2,全世界には17,425の民族・部族が存在すると言われています。しかし、そのうちの約6500以上の部族には、自分の部族の言語で礼拝する教会がありません。そればかりか、自分の言語に翻訳された聖書もなく、その部族を宣教しようと担当している教会や宣教団体もないのです(2020年の時点での資料)。このように「教会、聖書、宣教者」のいない部族を「未接触・未伝道部族」(Unengaged Unreached People Group、略してUUPG)と呼んでいます。これらの部族の中で、教会が開拓されなければなりません。
(クリスチャン人口が2%以下の民族を未伝道部族だと定義して「日本も未伝道部族だ」と主張する人もいます。しかしここでは「教会、聖書、宣教者」の全くない「未接触・未伝道部族」を、厳密な意味での未伝道部族と定義して、話を進めます。)

(未接触・未伝道部族のいる所)
3,「宣教」とは、文化の壁を越えて伝道することです。単に外国に出て行って、距離的に遠い所、クリスチャン人口が少ない所で伝道することではありません。「E尺度」とは、福音伝道者と潜在的回心者との間の文化的距離を表す尺度です。
E0:教会員に対する信仰回復伝道。文化的障壁はありません。
E1:教会と接触のない未信者への伝道。同一文化圏内での伝道。「教会文化」の壁があります。
E2:似ているけど違う文化圏内にいる未信者への伝道。教会文化の壁、文化的距離があります。
E3:全く違う文化圏内での伝道。教会文化、言語、生活様式の壁があります。
・・・・E1伝道が最も効果的ですが、その前にE3が必要です。まずE2とE3伝道を通して、文化的障壁を超えて新しい共同体を作り、その部族集団の中に、福音を熱心に伝える健康的な現地教会を生み出します。次にその現地教会が、もっと効果的なE1次元で伝道を継続して行きます。全ての部族の中にE1伝道が実行されるようになるまで、外部からのE2、E3伝道がまだ必要なのです。
「一般宣教」とは、すでに教会がある部族集団(既伝道部族)に福音を伝える他文化圏キリスト教活動のことです。これに対して、「先駆的開拓宣教」とは、教会がまだない部族集団(未伝道部族)に教会を生み出そうとする他文化圏キリスト教活動です。
・・・・確かに、両方とも必要です。しかし、全般的な宣教任務を完成するためには、先駆的開拓宣教が戦略的に優先されるべきです。
4,未伝道部族は、外部から宣教者が来ない限り、福音を聞くチャンスが全くありません。だからこそ、誰かが行かなければならないのです。ですから未伝道部族への宣教は、大宣教命令の任務完了のためにどうしても必要な、全教会の最優先課題なのです。世界人口の約3分の1はクリスチャン、他の3分の1はすでに教会のある部族(既伝道部族)内にいる未信者、残りの3分の1は未伝道部族内にいる未信者です。しかし、全宣教師の約90%は、すでに伝道された部族で働いています。未伝道部族のために働いている宣教師は、全世界の宣教師数の約10%にすぎません。何という大きなアンバランスでしょうか!

5,このような世界宣教の問題を打ち破るために、FTTという宣教ネットワークが作られました。FTTとは、Finishing The Taskの略で「任務を果たし終える」という意味です。これは、「すべての民をわたしの弟子にしなさい」という、主イエスの大宣教命令の任務を果たし終えるために、世界中の主な宣教団体が集まって話し合い、2004年から始められました。現在では世界中の1400個以上の宣教団体、教団、教会が協力し合って進めている全世界的・超教派宣教運動です。(www.finishingthetask.com)
FTTでは、全世界の未伝道部族のリストを作成し、まず人口10万人以上の未伝道部族639部族を第1次目標としました。そして参加している各宣教団体に、これらの部族で宣教を開始するようにチャレンジし、分担し合いました。その結果、どうなったでしょうか? 2004年にFTT運動が始まって、6年後の2010年までには、470部族で教会開拓が始められました。人口10万人以上の未伝道部族は、639から169に「激減」したのです!さらに4年後の2014年には、その数は90部族にまで減りました。つまりこの10年間で、549部族が未伝道部族から「既伝道部族」になりました。これは驚くべき早さです。なぜこんなにも早くできたのでしょうか?それは、みんなが協力分担していっせいに取り組んだからです。その後では、人口5万人以上の未伝道部族リストを作成して、第2次目標を設定しています。
6,全世界のプロテスタント信者数約5億人を、全世界の未伝道部族の数6500で割ると、1つの未伝道部族に対して7万6千人以上のクリスチャンがいることになります。世界中の地域教会が分担して、1つずつ未伝道部族を担当して宣教するなら、残された任務の完了は十分「可能」です。そして実際、このビジョンをつかんだ教会や宣教団体、宣教師たちが、未伝道部族にターゲットを絞って教会を開拓しています。それで、世界中の未伝道部族の数は現在、どんどん少なくなって来ています。私たちがこの「残された宿題」をやり遂げて、主イエスをこの地にお迎えする日は、いよいよ近づいているのです。
